サンプルやら通販やら、ご用意しました。

平素よりお世話になっております。ふじさんです。
気付けば今週末には僕ラブ8とのことで、色々と直前準備に追われています。
ぽつぽつと反響もいただいておりまして、幸甚の至り。もちろん、当日は一期三話のファーストライブのような惨状になることも覚悟の上で、それでも精一杯楽しい時間が過ごせればと思います。



さて、前回お知らせした通り、このたびは内容のサンプルをご用意しました。
画像が多く長いエントリになってしまっておりますので、ブログトップよりお越しの方は「続きを読む」からどうぞ。
また、需要があるかわかりませんが、通販などもやってみようかと思います。
詳細は一番下に書いておきましたので、こちらもお目通しくださいませ。

続きを読む

表紙と収録内容、解禁しました。ほか

5/17開催「僕らのラブライブ!8」参加の続報でございます。
既報の通り、サークル「ふがく百景」の頒布物はいわゆる「日常の謎」を扱った「ラブライブ!」二次創作青春ミステリ、『ラブリドル!』(小説)となります。笑いあり、涙あり、論理あり、百合ありのあらゆる需要に応えられる贅沢な一冊……に、なっていると良いんですけどね、本当に。
配置スペースは【学22】。A6版文庫本216頁で頒布価格500円を予定しています。


気になる表紙はこんな感じ。

あぁ^〜。


何と言っても膝! 膝小僧ですよ!
あとはこの生き辛そうな表情。たまらんですね。最高か。
本の内容にぴったりなイラストを描いてくれたまわるんに感謝。





続いて収録内容をご紹介。





#1「園田海未と、たったひとつの冴えたやりかた。」

(あらすじ)
完璧な減量計画のはずが何故か一向に痩せない穂乃果。
むしろその体重はますます増加していて……!?
原因を調査した海未が直面する意外な真相。
そして、すれ違う各々の思いとは?
「教えてください――私は、道を誤っているのでしょうか」



二期七話のダイエット回をベースにしたお話です。
ふざけたあらすじですが大真面目に書きました。
海未ちゃんとにこちゃんという、何だか珍しい組み合わせが推理合戦的なことをします。
ほのうみ勢は幸せになれる内容なんじゃないかと思います。






#2「西木野真姫と、夏への扉。」

(あらすじ)
合宿中、作ったばかりのμ'sの新曲、その楽譜が盗まれた!
犯行声明には怪盗オトノキの署名。これは余興? それとも本物の悪意? 
犯人の正体は。動機は何か。にこを助手に真姫は調査へ乗り出す。
「――私って、そんなに無理してるように見えるのかしら」



収録作中で一番長いお話です。原稿用紙にして余裕で100枚超えてます。
僕が今まで書いてきた中で一番ミステリ的な濃度が高いお話になりました。読者への挑戦が付いているので、お時間のある方は挑んでみてね。
ちなみに同人誌全体のリードトラック的な位置付けで、表紙はこの作品基準で描いてもらいました。
内容的にはもう、全編、にこまき。かっこかわいい「お姉ちゃん」なにこちゃんと、生き辛そうな性格がたまらなく愛らしい真姫ちゃんを思う存分書けて幸せでした。りんぱな、りんまき、のぞえりなんかも少しだけ。






#3「星空凛と、天の光はすべて星。」

(あらすじ)
ラブライブ!決勝を前にした冬の夜、凛は天体観測の誘いを受け希の自宅へ。
そこで彼女が思い出したのは幼い日の謎。あの時、星空はどこへ消えたのか。
謎とは、解決とは、誰の為にあるものなのか。
「前にもね、あったなって。ちょっとだけ思い出したんだにゃ――昔のこと」



真姫ちゃん編の反動か、ミステリとしては中々変則的なお話になりました。
ちなみにベースはスクールアイドルダイアリー凛ちゃん編に収録されている「凛と一夜の間違い。」。
このエピソードが大好き過ぎまして、なんとかアニメ本編と繋げられないかなと頑張りました。
カップリング的には、のぞりん、りんぱなが美味しい感じに仕上がってる気がします。






更になんと、特別ゲストとして巻末には「DayTimeDreamer」(クリックでジャンプ)のなしれい氏(@74O)による「解説」を収録。
三本の短篇に触れながら、「ラブライブ!」という作品の持つ魅力と独自性に鋭く切り込んだ名評論となっています。正直、これを読むためだけでも500円の価値はありますよ!(汚いやり口)




といった感じで、収録内容の紹介でした。
心掛けたことはまず第一に青春小説として、原作のドラマ性を尊重し、その上で思春期の彼女達の悩みにあくまで寄り添うこと。第二にミステリとして、論理的な謎解きを重視し、決してワンアイディアに終わらせないこと。第三に青春ミステリとして、その双方をしっかりと両立し有機的に結び付いた作劇をすること。……なんて書くといかにも意識高い(笑)感じしますけど、実際はもうとにかく、自分自身が楽しんで書くことを最優先していました。
相沢沙呼先生、米澤穂信先生、長沢樹先生、円居挽先生などがお好きなら、恐らくお気に召していただけるんじゃないかなー、なんて自惚れてます。なにとぞよろしくお願い致します。

イベント後は通販なんかもできたら良いなー、と考えているのですが、こちらはまだ諸々白紙の状態。
実行するとしたらすべて手作業での管理・発送作業となりそうで、考えるべきことが多そうな感じです。





さて、今回はとりあえずこの辺りで。
次回の更新では本文の試し読みの公開などを予定しています。
それではまた。

サークルカット、公開しました。

おばんです、ふじさんです。
僕ラブ!8参加の続報として、今回はサークルカットを公開致します。










ほのクロール is 尊い

サクカに限らず、表紙・扉絵などイラスト関係はすべて友人のまわるくんにお願いしました。「ザレゴトメイテルの人」とご紹介すれば通りが良いでしょうか。忙しい中、無理を言って時間を作ってもらいました。持つべきものは友。あざっす。

まわるに限らず、今回の同人誌制作に携わってもらっているスタッフは全員リアルの知り合いだったり致しまして。言わば完全なる身内本になっています。サークル参加の経験ゼロ、きちんとした二次創作活動すら初めて、そもそも同人イベントさえまともに行ったことのない僕が本を作るところまでこれたのは、ひとえに手伝ってくれている皆のお陰です。
いずれちゃんとした形でクレジットできたら良いな。

ちなみに今ツイッターとこっちとで、ともにアイコンとして使ってる真姫ちゃんは表紙イラストの一部なんですが。穂乃果のサークルカットに釣られて来ていただけた方にも、ちゃんとご満足いただけるような内容にはなっているはずですので。何卒。何卒、よろしくお願い致します……!
決して推しだから描いてもらいたかっただけ、とかそういうことではないですよ?()

とまあそんな感じで。
次回の更新辺りでそろそろ、肝心の中身の情報をお知らせしていけたらなあ、と思います。

ではまた/^o^\

【告知】同人活動、始めました。

ご無沙汰しております。
色々と記事を整理した関係もあって前のエントリから四年ほど開きができてしまっておりますが、実際の更新自体は二年半ぶりくらいになるでしょうか。なんとか生きてます。ふじさんです。

さて、この度、同人活動を始めることとなりました!

5/17開催のイベント「僕らのラブライブ!8」(於・大田区産業プラザPio大展示ホール)に、サークル「ふがく百景」名義で出展します。
頒布物は「ラブライブ!」の二次創作青春ミステリ短篇集『ラブリドル!』(文庫判小説本)を準備中。μ’s各メンバーを探偵役に据え、彼女達が日常で遭遇した「謎」と青春の一幕を描きます。

詳しい内容や表紙の見本、試し読みなど、随時このブログでも掲載していきますのでどうぞよろしくお願い致します/^o^\
ツイッターの方でも色々呟く予定なので @fuji_3 アカウントの方も是非覗いてみてくださいな。

取り急ぎ、第一報でした。

私たちが星座を盗んだ理由/北山猛邦

私たちが星座を盗んだ理由 (講談社ノベルス)

私たちが星座を盗んだ理由 (講談社ノベルス)

2011/3/11読了

[概要]
優しく、美しく、そして残酷な5つの物語。北山ミステリの真髄! 若手注目作家の、衝撃ミステリ短編集誕生! 恋のおまじないに囚われた女子高生の物語――「恋煩い」 絶海の孤島にある子供たちの楽園の物語――「妖精の学校」 孤独な詐欺師と女性をつなぐケータイの物語――「嘘つき紳士」 怪物に石にされた幼なじみを愛し続ける少年の物語――「終の童話」 七夕の夜空から星座を一つ消した男の子女の子の物語――「私たちが星座を盗んだ理由」 これぞミステリの醍醐味、全てはラストで覆る!


[雑感]
第24回メフィスト賞受賞作家、北山猛邦の最新刊。振り返ってみて驚いたのですが、講談社ノベルスからの作品刊行は『「ギロチン城」殺人事件』以来六年振りのことだったりするんですね。個人的には「あれ……石球城は?」という疑問を禁じ得ない訳ですが、何にせよ今回、「メフィスト」掲載の短篇三作に+書き下ろし二作で一冊の短編集にまとまったことは素直に喜びたいと思います。……「ファウストの短篇はいつ本になるの? って言うかそもそも本になるの?」という疑問は案の定禁じ得ない訳なんですが。はてさて。いきなり脇道にそれるとかどういうことなの……。ともあれ閑話休題
北山猛邦は「終わりゆく世界」を書く作家です。その作風はデビュー作『「クロック城」殺人事件』から既に見られる訳ですが、あの作品の何が異端だったかって、そういった特殊な世界観が(若干ネタバレ。要反転)「ミステリ的な企みとは離れたところに独立して描かれている」(ここまで)点ではなかったでしょうか。「デビュー作にはその作家の全てがある」という言葉があります。作家・北山猛邦の視線の先には、常に「終わりゆく世界」の漠然とした不安感が捉えられているように個人的には感じます。そしてそれは短編集である本作、『私たちが星座を盗んだ理由』に於いても決してブレることはありませんでした。
無論「終わりゆく世界」という言葉自体は多分に抽象的なものであり、表現のされ方、発露のされ方には様々な形があり得ます。本作に収録された五篇はいずれも直接的に「終末」を舞台とした物語ではありませんが、登場人物たちを取り巻く極々小さなひとつの「世界」――それを(若干ネタバレ。要反転)「人間関係」(ここまで)という言葉に直すことが許されるならば、何となく僕の言わんとすることが伝わるのではないかなあ、と。「全てはラストで覆る!」とは本作に対するキャッチコピーのひとつなのですが、「ラストで覆」ったその先に読者を待ち受ける景色とは、やはり何らかの形での「終末」だったのだと言えそうです。
読書メーターの繰り返しになってしまいますが、僕が思う北山作品の魅力とは切なく穏やかでありながら決定的に残酷な童話的世界観と、見えていた景色が一瞬にして反転するラストの衝撃、何と言ってもこの二点の存在が大きいです。本作『私たちが星座を盗んだ理由』は頁数に制約のある短編作品の中でこれらの美点が見事な融合のもとに結実した、粒揃いの短編集であると言えるでしょう。
……ただ、正直上の[概要]にも書いたこの内容紹介は、ちょっと不必要に「ミステリ」という要素を推し過ぎかな、という気も否めなかったり。前述した「童話的世界観」と「ラストの衝撃」、僕も本作を読んで初めて思い当たったのですが、北山作品を支えるこれらの要素は何もミステリのみに対して効果的に作用するものではないんですよね。むしろ「童話的世界観」≒「ファンタジー的な世界観」と(本格)ミステリとの組み合わせはお世辞にも相性がいいとは言い難い訳で。故に上記[要反転箇所1]のような処理が求められたのだと思うのですが……「事件が起こって探偵役が登場し、快刀乱麻を断つ解決編が披露され全ての謎が解体される」、そういったタイプのオーソドックスな(本格)ミステリを期待し過ぎると、もしかしたら肩透かしを食らったような気分になるかもわかりません。中には具体的な解決――結論がつかない作品なんかもあったりして。この辺りは少し注意が必要かも。
個人的にはこれまでの北山作品になかった、非常に肉感的な恋愛模様が描かれる傑作「恋煩い」と、読了後に読者の自発的な行動と推理が要求される怪作「妖精の学校」の二篇を本作に於ける双璧として推したいです。本当だったらこのあと、「続きを読む」からネタバレ満載で「妖精の学校」が「一体何を書いたものなのか」という読解をしてみようかと思っていたのですが。やはり無粋だという自戒の念を振り払えないことと、加えてばたばたしているうち既にあちらこちらで同様の試みがなされていることを鑑み、今回はこの辺りで筆を止めておこうかと思います。
「妖精の学校」のネタバレを目的に辿り着かれた方のためには、とりあえず(ネタバレ。要反転)最後の数字が指し示す場所を地図上で探して(ここまで)みてください、とだけ。その取り巻く事情、詳細を更にWikipediaなどで調べてみれば、あの作品で書かれているものの正体には何となく察しがつくかと思います。その瞬間、きっと上に書いた「終わりゆく世界」、「終末」なんて言葉が物語上で鮮やかに浮かび上がってくるんじゃないかなあ、なんて。以上。

マージナルワールド/湊利記

マージナルワールド (講談社BOX)

マージナルワールド (講談社BOX)

2011/1/8読了

[概要]
彼女は死んだ。中二病を拗らせて。表向きは普通の大学生。しかしその実体は、異世界で巨大ロボットを操り人類の敵を倒すエージェント―― 自分の携帯の番号にその携帯で電話を掛けると行けるという、「圏内」と呼ばれる異世界。大学生の光宮はそこでアガシオンと呼ばれる巨大ロボットに乗り込み、日夜BAGsと呼ばれる敵と戦っていた。すべてはかつて恋した仲間・嘯樹のカタキ、水嶋を殺すために。そんなある日、光宮は圏内に「いるはずのない」謎の少女と出会い……!? 「駄目よ、戦わなきゃ。現実と」新次元ロボットアクション!! いざ中二病の極北へ。


[雑感]
第4回講談社BOX新人賞Powers受賞作。あらすじだけを見てしまうと単なるありがちなライトノベル作品ながら、そこは一点突破を至上とし「一作家一ジャンル」とまで言わしめたメフィスト賞、文芸誌「ファウスト」の流れを汲む講談社BOX新人賞。頭空っぽにして読める軽い娯楽小説、という範疇にはどうしても収めることができない、本作も中々に「捻くれた」一作として仕上がっています。
作品として自己言及的に「中二病」を扱っている小説と言えば、個人的には傑作『AURA 〜魔竜院光牙最後の闘い〜』(田中ロミオガガガ文庫)が思い浮かぶのですが。本作はあちらともまた中二病への迫り方が異なる内容で、言わば「本の外側」から、制作サイドの言葉として「この小説のキャラは中二病でーすw」と注釈が入ってしまっているという有様。どうにも好き嫌いが分かれてしまいそうなやり方だなあ、と個人的には感じるのですが、その描こうとしているものは割に明確で捉え易いように。少なくとも同じPowersBOXとして刊行された『コロージョンの夏』、『神戯』と比べれば遥かに筋がまっすぐで一般受けはし易い作風と言えるでしょう。
本作に登場する異世界、「圏内」とは電波の通じない圏外に対し「電波の通じ過ぎる場所」というニュアンスで語られ、「現実世界」には不必要だとして排斥された「イラナイモノ」、ガラクタ類が無秩序に散らばる荒廃した世界として描かれます。構図としてはこの圏内に行くことのできる主人公たちもまた、「イラナイモノ」。ここに登場するキャラクターは皆、中二病――社会と折り合いをつけられず、現実を受け入れることのできない人間たちな訳で、ここに本作最大のテーマ性が窺えるように思えます。(若干ネタバレ、要反転)圏内から現実世界への侵攻を企む水嶋の野望とは要するに「自分たちを受け入れない社会への反抗」であり、「受け入れられたいのに迎合できない」(ここまで)というひりつくようなこの若さは、本作の「色」を端的に表現した要素と言えるのではないでしょうか。裏返してしまえば、主人公像にさえも拭いがたく見られるこの点を「若さ」と見るか、あるいは単に「幼さ」と見るかで本作に対する印象は大きく変わってしまうのではないかと。どちらにせよ本作におけるド直球に中二病なクサい設定類は、その大部分において作者が意図的に配したものであり、飽くまでテーマを描くための「手段」として見るのが正解じゃないか、と個人的には感じます。……まあ、「痛てててて」という反応を禁じ得ない部分も、当然ある訳ですがw
セカイ系」と呼ばれる作品群があります。僕としては一応、「登場人物が【個人】と【世界】の中間に位置すべき【社会】との手続きを踏まず、直接的に【世界】と関係してしまう作品」という認識で捉えている言葉なのですが……その定義に照らし合わせて見るならば、本作の登場人物は「本来関わり合いになるはずのなかった【社会】と直面してしまった「セカイ系」作品の登場人物」なのではないでしょうか。中二病に罹患したまま「大学生」になってしまった彼ら。物語として描かれるべき「戦争」を失意の中で終えた「エンドロールが流れた後の世界」、就職活動や性交渉を体験し、「大人」への過渡期を迎えてしまった「セカイ系」で中二病な彼らの戸惑いは、そのまま「思春期の自意識」を抱えて素直に大人になれない若者たちの戸惑いとも重なります。自身就職活動中の身であったらしい作者がいかなる思考を経てこの作品世界を作り上げるに至ったのか、こう言ってしまうとアレですが、同学年として、僕には少しわかるような気がしてしまいました。
……と、まあ。ここまでを割と肯定的な論調で書いてきた訳なのですが、バランスを取るように難点も軽く挙げておくと、やはり全ての企みが成功している訳ではなさそうな辺りがどうにも辛い。中盤で明かされる「時計眼の人間」――「ヘレネス」との対立の実像なんかを考えてしまうと、主人公の行動や思考を手放しで支持することは難しいですし。冷静になって一歩退いた視点から見てみると、この世界観、言ってしまえば捻くれたニート気質の若者が大好きなネットゲームの世界で憂さ晴らしに敵キャラを虐殺しているようなもので、テーマと素材とが直結し過ぎてしまっている辺りなども含め、読みようによってはどうにも残念な「浅さ」を感じてしまいます。上で少し触れた性描写についても、狙いはわかるのですがやはり取ってつけたような感が否めず作品全体から浮いてしまっていて、無理に背伸びをして書いているような印象が若干ありました。
あらすじという形で記される表面上のストーリー以上に、読むべき点の多い本作『マージナルワールド』。新人のデビュー作ですしまだまだ完成された作品とは言い難いものの、『コロージョンの夏』に、『神戯』に欠けていたリーダビリティという要素がしっかりと考慮された、良い作品だと思います。個人的に書かんとするテーマ性に関してはこれ一作でも充分拾えているように感じるのですが、次回作以降がまたどういった読み味になってくるのか、楽しみにしたいと思います。
以上。

無貌伝 人形姫の産声/望月守宮

無貌伝 ~人形姫の産声~ (講談社ノベルス)

無貌伝 ~人形姫の産声~ (講談社ノベルス)

2010/12/13読了

[概要]
これは在りし日の名探偵と生まれいずる怪人の物語――。「人形を見せてあげる」遥はそう言って、怪異が集まる島に秋津を誘った。そこに住むのは、幼き彼女の姿をした人形と、男たち。遥の失踪。消えた一日の記憶。破られた封印……。命の灯が一つ消えるたび、一体の人形が動き出す。孤島に秘められた悲愴な真実に秋津はたどりつけるのか!?


[雑感]
第40回メフィスト賞受賞『無貌伝』シリーズ3作目。「ヒトデナシ」という怪異の類が実在する世界の探偵物語で、多少何でもアリ感はあるものの、ミステリとしても伝奇小説としても、あるいはキャラクター小説としても中々に楽しめるシリーズです。
『双児の子ら』、『夢境ホテルの午睡』と前作までは高名なる「三探偵」がひとり、秋津承一郎につく探偵助手の少年・望の視点に沿って事件が描かれてきましたが、今回は趣向を違えた言わば「過去編」。大学時代の秋津とその妻・遥の馴れ初めとなった事件を中心に、シリーズタイトルにも掲げられた「ヒトデナシ」・無貌の誕生を書く、番外編でありながら物語の本筋に深く関わるであろうエピソードとなっています。
不気味な人形、湖に巣食う「ヒトデナシ」によって閉鎖された離れ小島の屋敷、集った五人の「父親」たち……と、序盤から作品内に構築される雰囲気はかなりのもの。ゴシック調の小道具と本格ミステリとの相性に関しては言うまでもありませんが、ある種の幻想小説のようにふわふわと漂うような書き振りは疑いなく作者の持ち味でしょう。「過去編」、「番外編」、本編と直接の関わりがない点を鑑みて、公式にアナウンスされている通りここからシリーズに入ったとして特に問題はない一作となっています。
(ネタバレ、要反転)まるで何かの死亡フラグのように遥との過去を披歴し、ばったばったと殺されていく(正確を期すれば命を奪われていく、といった表現が適切でしょうか)パターン化された父親たちの死に様や(ここまで)、前述の通り幻想小説ばりの地に足がつかない語り口など、傷として捉えれば捉えられてしまう穴はいくつもある訳ですが――使われているトリック自体は設定を上手く活かしたもので、更にもうひと捻り細工がなされたストーリー構成、ラストの爽やかさと、恐らく「新しいことを」と画策したのであろうシリーズ第三作としては及第点ものの仕上がりとなっているように思えます。
ただ。
もちろん僕自身が幻想小説であるだとか、曖昧にぼかされた解決だとかがあまり得意ではない、という個人的な事情を加味した上で。それでも。今作の解決の提示には少し、不満が残ってしまいました。上に述べた「もうひと捻り細工がなされたストーリー構成」という点がネックになってしまっている気もするのですが、要するに解決が若干説明不足、言葉が足りないのではないか、ということです。書かれている通りをそのまま受け取るだけで、当然、「何が起こっていたのか」は充分に理解できますし、ミステリ的な驚きを得ることもできるのですが……細部について思いを巡らした際、読者自身に考えさせ補完させる部分が多かったのではないかな、と。少なくとも僕自身は、与えられた情報だけでは事件全体を一本の物語として組み立て直すことができませんでした。
という訳で。この記事では普段と少し趣向を変え、僕が紙とペンを用いり行動表を作ることで思い至った「今作で描かれたのだろう事件の全貌」を記してみようかと思います。まあ無粋なんですけどね。しかも僕に読解力がなかっただけ、という公算が高い話でもあるんですけどね。もしかしたら僕と同じもやもやを抱えている方もいらっしゃるかも知れない、ということで。結局はあれです。自己満足。便利な言葉!
以下、ほぼ全ての記述がネタバレに相当すると予想されますので、従来通り「続きを読む」からお願い致します。

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