僕ラブ16戦利品感想③

Wake up! Wake up! Wake up!・海に行くには早すぎる/東京クリームソーダガール/だびれおさん

しんどい心をほんわりと解きほぐしてくれる、にこぱな同棲料理本。卒業後、ともに暮らし始めたにこちゃんと花陽ちゃんが互いを想い合いながら作ったお料理の写真・レシピを中心に、やわらかなショートストーリーまで添えてしまうという、あまりにも尊い発想に支えられた名品です。サークルチェックの段階で存在を知り、新刊・既刊併せて購入したのですが、これは「良くぞ見つけた!」と自分を褒めてやりたい気分。
あとがきでもご謙遜とともに触れられていますが、紹介されているお料理は至って素朴。いずれも一度は口にしたことのあるようなメニューで、調理工程にも特別複雑な箇所はないものの、いや、この「当たり前に普段食べている感じ」の食事風景が作品のコンセプトにまさしくドンピシャ。ふたりが送る実生活の一幕を、まるで実際に垣間見ているかのようなリアリティは、小説とも漫画とも異なる料理本という表現形式ならではでしょう。ショートストーリーの行間から自然に伝わってくるふたりの心理に、可愛らしく華やいだ、にこぱなという関係性の息吹を確かに感じました。
相手の食べるものを作り、相手の作ったものを食べる、「食事」という有りふれた営みの持つ本質的な意味と力を再発見できる傑作。とりあえず「だし巻き玉子のサンドイッチ」と「肉みそのおにぎり」は簡単そうですし自分でも作ってみようと思います。「手軽」と「手抜き」は隣接した言葉のようで全然別物なんですよね。なんてそんなことまで連想しつつ。ごちそうさまでした。